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雑多です

【読書】『マヨナカキッチン収録中!』を読んで思い出した「家事への後ろめたさ」

 

 この話の主人公は、キッチンバサミを使って料理をしている。そしてそれをずっと後ろめたく思っている。

 

『みっともない、ちゃんと包丁を使いなさい』

 

 主人公は二十歳くらいのときに病床の母からそう言われてから、妹と父以外の前では料理をしたことがなかった。

 仕事や自分の結婚への思いなども絡みながら、話の中でその後ろめたさが少しずつ緩んでいくのを、私はほこほこと見守った。

(ちなみにこれは今から書こうとする日記には全然関係ない余計な感想だけれど私は別の人とうまくいくと思ってましたゴニョゴニョ)

 

 

 料理(家事)に関する後ろめたさ。

 または、料理(家事)に関する理想。

 それらに、追い詰められる、まではいかなくても傷つく人は多いと思う。

 主人公はキッチンバサミだけれど、他にも挙げられる人は多いのではないだろうか。

 私もいろいろある。

 いろいろあるが、一番記憶に残っているのは、じゃがいものきんぴらだ。

 ある日唐突に、義父が、できあがったきんぴらを食べて、

「ふにゃふにゃしてマズイ。レンジを使った手抜きの料理なんて食べたくない」

と、言い放ったことがあった。

 私はぽかんとした。

 いや、いつも平気で食べてるじゃん?

 私は、食材が生煮えになることが一番怖いので、ぶ厚めのきんぴらを作りたいときには、先にレンジにかける。

 少し柔らかくしてから、フライパンに移してじっくり、カリカリにする。それから味をつける。

 いつもそうしている。いつもそうしていた。

 けれどたまたまその日、義父はキッチンに来て私がじゃがいもをレンジにかけたのを見たのだ。

 それを見て、「今日は手抜きだ!」と思ったのだろう。

 傷つくとか怒るとか色々発露すべき感情はあった気がするのだが、正直なところ、私はあっけにとられて何も言えなかったし、心中には底意地の悪い笑いしか浮かばなかった。

 その理屈で言えば、義父はその日、食べられるものは一つもなかった。

 その日のメニューは、じゃがいものきんぴらと、蒸したスナップエンドウ、焼き鮭、野菜たっぷりの豚汁、ごはん。

 おかずの全てに「電子レンジ」の恩恵があった。スナップエンドウはレンジ用の蒸し器で蒸したし、焼き鮭はレンジのグリル機能で焼いた。豚汁も、具材をあまり細かくせずにごろごろ状態で食べたかったので、具材をカットしたあと、時短のためにレンジにかけていた。お昼に余ったごはんを温めて、炊きたてのごはんに混ぜたので、ごはんにも電子レンジが使われている。

 しかも、それには全く気づいていない。

 たまたま見たその一回で、じゃがいもにのみレンジが使われていると思い込み、なおかつ、それが今日だけだと思っている上、レンジを使われたら味の違いが、食感の違いが自分はわかるのだと示したうえで、料理にレンジを使う=手を抜くことを諌めなければならない、という思考に至るのが、申し訳ないけれど面白かった。

 ちなみにその時は義母と夫が怒ったので私は神妙な顔をして黙っていた。私は性格が悪いので、別に面白いからいいよとは言わなかった。じゃあ今日は何も食べられませんねえ、と言わなかっただけ優しかったと思いたい(と自己弁護をしてみる)。

 ただ、じゃがいものきんぴらを次に作ったとき、今日はうまく出来てると言いながら食べたのも確かめたうえで、「今日もレンジ使ってますよ…?」と言って笑いを取ったので、やっぱり私は性格が悪いと思うけれども。

 ちなみに、義父は理想があるだけで別に普段から意地が悪い人だとかではない。お米も炊いたことのない人で、それが男性としての自慢として成り立つ年代の人特有の勝手な理想だし、年代的にも、地域的にも、ある程度仕方がないことも理解している。別に一方的に悪にしたいわけではないので、その点はご容赦いただきたい。

 

 

 料理はやっぱり火じゃないと、とか。

 電子レンジで先に柔らかくしたりしたから食感が悪い、とか。

 カレーぐらいちゃちゃっと作ればいいのにレトルトなんて、とか。

 体のことを何も考えてない、とか。

 愛情が足りない、とか。

 これらは、実際に言われたことのある言葉の一部だ。

 傷つかなかったわけではない。腹を立てなかったわけでもない。でも、だんだんバカバカしくなってきて、今、私がそれらに思うことを一言で言うなら、

「じゃあ、自分でやりなよ」

である。

 レンジが嫌ならレンジを使った料理を食べなくていいし、火を使えと言うならごはんも火で炊いたらいい。レトルトカレーが嫌なら自分で「ちゃちゃっと」作ればいいし、体のことは自分で気遣ってくれたらいいと思う。愛情って具体的に何? 作ってるだけで愛情あるだろ?

 やる気がなくても時間がなくても、朝起きたくなくても体調がちょっとくらい悪くても、作らなければならないから作る。手を抜いて、時短して、適当にして、何が悪い!

 文句があるなら自分で作って食え!!

 

 勿論、そう口汚く叫んだりはしない。(いや、本当に腹に据えかねたら私は叫ぶタイプだけど)

 でも。

 後ろめたくなんかない。申し訳なくも恥ずかしくもない。開き直りと言われればそれまでだけど、別に悪いことなんかしていない。

 そう思えるから、ギリギリ、私は今も、料理が嫌いにならずに済んでいる。